東部軍管区の兵站関連施設

基礎資料

東部軍管区の積替兵站施設(PLK)および装備保管修理基地(BKhiRVT)についてまとめたもの

2009年の軍改革以降、ロシアは兵站施設の集約と合理化をすすめてきた。2015~2016年にかけては、ミサイルや弾薬、爆薬等の保管施設(アルセナル)を全国140か所から13か所に集約し、施設を新たに建設した1。この際、全ての施設でバンカーがつくられ、屋外保管施設は全て廃棄されたとされる。

さらに、2016~2019年にかけて、上記保管施設等から部隊へ補給するための中継施設については、全国330か所あったところを24の積替兵站施設(PLK)へ集約し、同施設を新たに建設した。これにより保管にかかっていた費用を半減させることができたとも言われている2

東部軍管区の積替兵站施設(PLK)3

またこれらとは別に、地上軍の規模縮小によって使用されなくなった装備を中心に、有事において自動車化歩兵旅団等を新規に編成するための装備保管修理基地(BKhiRVT)が存在する。同基地は予備役が動員された際や、遠方から兵員のみが空輸されてきた場合に使用する装備になることが見込まれる他、軍管区内の予備装備としての利用も考慮されていると見られている。通常約111人の文民職員が管理しているとされる4

東部軍管区の装備保管修理基地(BKhiRVT)(推定)5

英国王立防衛安全保障研究所のイーゴリ・スチャーギンは、軍輸送航空隊等の輸送手段のみならず、これらの兵站態勢についてもロシア軍の戦略機動を支える重要な施策として強化が進められているとみており6、施設が予定どおりに建設されていれば、兵站態勢の強化はPLKの完成が予定されている2019年をもって1つの目途を達成することになる。

またスチャーギンは、兵站施設の大幅な集約によって保管等に必要なコストが低減し、また利便性も向上した反面、分散配置されていた弾薬等が集中保管されることで、敵の攻撃からの抗堪性は以前よりも低下している可能性を指摘している他7、装備保管修理基地の装備を使用するにあたっては相応の訓練や習熟が必要とみられ、その即応性には疑問が残るとしている。

  1. Igor Sutyagin, Russia’s New Ground Forces: Capabilities, Limitations and Implications for International Security (Whitehall Papers), Taylor and Francis, Kindle Edition, 2017, pp. 16-22.
  2. Ibid.
  3. Ivan Safronov, “Minoborony menyaet sklady na kompleksy,” Kommersant, February 29, 2016, www.kommersant.ru/doc/2926598.
  4. Sutyagin, Russia’s New Ground Forces, pp. 16-22.
  5. milkavkaz, “Vooruzhennye Sily Rossii,” June 6, 2017, milkavkaz.com/index.php/voorujonnie-cili-racii; Sutyagin, Russia’s New Ground Forces, pp. 20-21.
  6. Sutyagin, Russia’s New Ground Forces, pp. 16-22.
  7. Ibid.

2019年7月21日