プーチン大統領がアジア太平洋地域におけるミサイル配備を示唆

基礎資料

ロシア大統領ウラジミル・プーチンは安全保障会議常任メンバーと臨時会議を実施

※2019年8月23日付、ロシア連邦安全保障会議公式ウェブサイト記事の翻訳1、下線は翻訳者による。

会議参加者はドミトリー・メドベージェフ首相、バレンチナ・マトビエンコ上院議長、ビチェスラフ・ボロジン下院議長、アントン・バイノ大統領府長官、ニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記、ウラジミル・コロコリツェフ内務大臣、セルゲイ・ラブロフ外務大臣、セルゲイ・ショイグ国防大臣、セルゲイ・ナルイシキン対外情報庁長官であった。また同会議にはユーリー・ボリソフ副首相が招待された。

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V. プーチン: 親愛なる同僚の皆さん、こんにちは。

皆さんが全般的にご存知であることから始めたいと思います。8月18日、米国では地上発射型巡航ミサイルの発射試験が行われました。これは、米国防総省の発表によれば、500キロメートル以上の距離にある目標に到達しました。

このような兵器は1987年のINF条約で禁止されたカテゴリーに分類されます。この他、同試験においては汎用のMK-41発射機が使用され、条約が有効であった時期にロシア側が米国に表明してきた主張の妥当性が完全に確認された形となりました。

私たちは、米国の同発射機がルーマニアにおける地上のミサイル防衛基地に配備され、今後ポーランドに配備を予定していることは、INF条約の直接的かつ実質的で、重大な違反であると繰り返し指摘してきました。

米国はこれを強く否定し、地上配備のMK-41は海上発射型「トマホーク」巡航ミサイルを発射する能力はないと主張してきました。今や違反の事実は明白であり、議論の余地はありません。彼ら自身が自白したのです。

そこで無論、疑問が生じます。ルーマニアやポーランドには将来何が配備されるのかについて、私たちはどのように理解するべきでしょうか。ミサイル防衛システムなのでしょうか、それとも十分な射程を有する攻撃用ミサイルなのでしょうか。

条約によって禁止されたミサイルの実験が、米国政府による条約脱退手続きの完了後わずか16日後に行われたことは注目に値します。これが即興によるものではなく、事前に計画されていた段階的な措置であったことは明らかです。

これは、私たちがかつて表明した懸念の妥当性を確認しているに過ぎません。私たちは以前より、米国がすでに長年にわたってINF条約で禁止された兵器の開発に携わっているとの情報を得ていました。これについて、私たちのパートナーたちに繰り返し指摘してきました。

しかし、この容認できない状況を是正し条約を遵守するのではなく、米国はロシアが条約に違反しているというプロパガンダ・キャンペーンを展開したのです。今やすべての人にとって明らかであるように、このキャンペーンの唯一の目的は米国による条約違反の作業を隠蔽し、最初から条約より脱退する意図であったことを隠すことだったのです。

米国の本当の意図はどのようなものか、疑問の余地はありません。規制を排除し、かつて禁止されていたミサイルを世界の様々な地域に展開するためのフリーハンドを獲得することにあるのです。非常に高いランクとレベルの米国政治家たちは、新しいシステムの配備はアジア太平洋地域から開始する可能性があると表明していますが、これは私たちの基本的な利益に影響します。すべてがロシア国境の近傍に所在しているからです。

皆さんご承知のように、私たちは、コストが高く、我が国の経済にとって破滅的な軍拡競争に陥ることを望んだことはありませんし、現在も望んでもおらず、将来望むこともないでしょう。ロシアの防衛予算は非常に慎ましいものであり、世界では米国、中国、サウジアラビア、英国、フランス、日本に次いで7番目です。

我が国による最新の、世界で類のない兵器の開発は、米国による2003年のABM条約からの一方的な脱退によって引き起こされたのであり、触発されたとも言えるでしょう。私たちは当然、国民と国家の安全を保障することを余儀なくされ、またその必要があったに過ぎません。私たちは現在もこれを行い、当然、将来も行っていくでしょう。

これとともに、再び変化しつつある状況を念頭に、ロシア連邦国防省、外務省、その他の関連省庁に対して、先述の米国の行動によって形成されている我が国に対する脅威レベルを分析し、対称的な対抗を準備する包括的措置をとることを指示します

またロシアは以前と同様、国際安全保障の信頼と強化を回復させるため、米国との対等で建設的な対話を行う用意があります。


※翻訳者コメント

これまでのロシアによるミサイルの配備状況から、今後ロシアがアジア太平洋地域において地上配備型の長距離巡航ミサイルを配備するとすれば、北朝鮮国境付近のウスリースクとなる可能性が考えられる。

また海上発射型の巡航ミサイル「カリブル」については、かねてより太平洋艦隊へ配備される計画が伝えられている。

将来的な東部軍管区の長距離巡航ミサイル配備(推定)2
  1. Security Council of the Russian Federation official website, “Prezident Rossii Vladimir Putin provel operativnoe soveshchanie s postoyannymi chlenami Soveta Bezopasnosti,” August 23, 2019, www.scrf.gov.ru/news/allnews/2633/.
  2. Karl Soper, “Russia’s Pacific Fleet prepares to receive first Kalibr-equipped vessels,” Jane’s 360, December 21, 2018, www.janes.com/article/85406/russia-s-pacific-fleet-prepares-to-receive-first-kalibr-equipped-vessels; Missile Defense Project, “SS-N-30A (3M-14 Kalibr),” Missile Threat, Center for Strategic and International Studies, August 11, 2016, last modified June 15, 2018, missilethreat.csis.org/missile/ss-n-30a/; Missile Defense Project, “Kh-101/Kh-102,” Missile Threat, Center for Strategic and International Studies, October 26, 2017, last modified June 15, 2018, missilethreat.csis.org/missile/kh-101-kh-102/; Missile Defense Project, “SSC-8 (Novator 9M729),” Missile Threat, Center for Strategic and International Studies, October 23, 2018, last modified January 23, 2019, missilethreat.csis.org/missile/ssc-8-novator-9m729/; milkavkaz, “Tikhookeanskij flot RF,” June 6, 2017, milkavkaz.com/index.php/voorujonnie-cili-racii/vmf/tf; milkavkaz, “Vozdushno-kosmicheskie sily: VKS RF,” June 6, 2017, milkavkaz.com/index.php/voorujonnie-cili-racii/vkc; ”Na ctrazhu Rodiny postupil novyj komplekt «Iskander-M»,” Konctruktorskoe byuro mashinostroeniya, June 28, 2016, kbm.ru/ru/press-centre/791.html; bmpd, “20-ya gvardejskaya raketnaya brigada poluchila komplekt raketnago kompleksa ‘Iskander-M’,” June 29, 2016, bmpd.livejournal.com/1988614.html; Aleksandr Khramchikhin, “Vozdushnye strategi,” Nezavicimoe voennoe obozrenie, December 6, 2018, nvo.ng.ru/armament/2018-12-06/1_1025_strategy.html; Sergej Ishchenko, “Tikhookeanskomu flotu Kreml’ narashschivaet «Kalibry» vne vsyakoj ocheredi,” Svobodnaya Pressa, July 2, 2019, svpressa.ru/war21/article/236971/.